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俺はじっと手鏡を見つめる。
朧気だった映像がはっきりしてくる。
冴えてない男子高校生がクラスで孤立している。男子高校生の周囲にはクラスメイトが一人もいない。時折声をかけるクラスメイトもいたが、いやいやながらだった。
映像がクラスからリビングに変わった。
食卓を囲む家族。その中でも男子高校は黙々と食べ、家族とはまったく会話をしない。食事が終わると母親が男子高校を罵倒し始め、兄も一緒に罵倒した。父親は母親と兄を止めずに冷めた目で男子高校生を見ているだけ。
そこまでの映像が写り終わると手鏡に結んだ紐がぶつっという音とともに切れた。
「これで全部か…」
俺はふーっと深い息を吐いて手鏡を取って脇に置いておいたタオルでふく。紐を適当にまとめて丸テーブルに無造作に置いた。花瓶を紙で包んで箱にしまう。
さて次は壺に取りかかろうとしたら扉を叩く音を聞いて、小走りてで玄関に向かう。
玄関を開けるとスーツ姿のいかにもセールスマンらしい男が立っていた。
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