∫第1話∫

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「わかりました。どういうのがいいでしょう?」 佐穂は男の求める『過去』の注文を聞いている。 こういうとき俺は気分が悪くなる。なんだが、胃のもがせり上がってるような感覚になる。 たぶんそれは嫌悪感だろう。 いい年した大人が自分の歩んできた道を″つまらないから″という理由で違う道をひくのだから。 「一騎。二番目の棚から小瓶を取って」 「はい」 俺は言われた通り、二番目の棚から薔薇の絵が彫られ、少々汚れた小瓶を取って男に渡す。 「これか?」 「そうですわ」 男が小瓶を受けとると小瓶が光り、何枚かの絵が描かれた紙が男の中に吸い込まれた。 これが『過去』を移したとういことになる。 「どうですか?」 佐穂が男に聞くと男は目を閉じて記憶をたどり、満足したように目を開けた。 「いい!いくらだ?」 「ありがとうございます」 佐穂にならって俺も頭を下げる。 男は代金を払って店を出て行った――――
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