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「わかりました。どういうのがいいでしょう?」
佐穂は男の求める『過去』の注文を聞いている。
こういうとき俺は気分が悪くなる。なんだが、胃のもがせり上がってるような感覚になる。
たぶんそれは嫌悪感だろう。
いい年した大人が自分の歩んできた道を″つまらないから″という理由で違う道をひくのだから。
「一騎。二番目の棚から小瓶を取って」
「はい」
俺は言われた通り、二番目の棚から薔薇の絵が彫られ、少々汚れた小瓶を取って男に渡す。
「これか?」
「そうですわ」
男が小瓶を受けとると小瓶が光り、何枚かの絵が描かれた紙が男の中に吸い込まれた。
これが『過去』を移したとういことになる。
「どうですか?」
佐穂が男に聞くと男は目を閉じて記憶をたどり、満足したように目を開けた。
「いい!いくらだ?」
「ありがとうございます」
佐穂にならって俺も頭を下げる。
男は代金を払って店を出て行った――――
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