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「な、なんでもありませんよ」
「なんでも?そんなふうには見えなかったわ。一騎」
俺の物思いの元凶であり、居候させてもらっている店―『骨董過去屋』の店長、朝霧佐緒だ。
この人は、はっきり言ってあまり関わりたくない部類に入る人間だ。俺の場合恩もあるし、それなりに楽しいと思うところもあるからだ。それに人と接する機会が非常に多い職業だから人の輪が作れる……と思いたい。
「なんでもないわけないでしょう。そんな変な顔して」
佐緒は俺の顔を覗き込みながらそういった。
その言動はもしかしなくても失礼に値するぞ店長!
…と言うわけにもいかず俺はぶすくれて答えた。
「悪かったですね、変な顔で」
ぷいっと俺はぶすくれた子供のように佐緒から顔を背けた。
すると佐緒はくすくすとまだ幼さが残るかわいらしい顔に笑みを浮かべた。
「ふふ。冗談よ、一騎。さ、仕事の時間よ」
「はいはい」
俺と佐緒はそうして店に入った。
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