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第二話『初期装備は葡萄の苗木』改めて『ダンベルは500㌘から』
××××
ここに一人の少年がおりました。
少年はちょっとした地主のせがれでそれはそれは可愛がられてぬくぬく育ちました。
この世に辛いことなどありはしない。運命に抗わず与えられたモノをただただ受け止め、流れて行けばよいのだ。無理に自分の意を通そうとするから、人は苦渋を自ら強いることになるのだ。
世の中とはそうもの。
妙に悟ったことなかれ主義の少年は今、人生最初のターニングポイントに立たされておりました。
「父上、いまなんと…?」
「私は反政府軍の提供者だと言ったのだ、いままで隠していてすまなかった。」
「そこじゃありません。私になにをしろとおっしゃったのですか?」
「…お前に、魔王を倒して欲しい。」
少年の父はかつて英雄になったことがありました。強い強い剣士だったのだそうです。
「お前は私の子だ。素質はある。ちゃんと修業を積めば私の様に力を持てる。武器さえ揃えればネフィリムに立ち向かうことも出来よう。お前はこの世界の希望になるのだ!」
(寝言は寝ていえ髭男爵が!)
少年は心の中でこっそり毒づきました。
父はそういいますが、実のところ少年は水の入ったコップよりも重たいものなど持ったことはありません。
きっとちゃんと修業を積んでいる間にネフィリムは寿命で逝ってしまうでしょう。
息子にそんな期待をしているのならもっと小さな頃から鍛練させればよかったものを、無茶振りもいいところだ。と少年は思いました。
(だが、ここで反論したところでどうだというのだろう)
「私は、父上の仰せのままにするだけでございます。」
少年のことなかれ主義はこんなところでも発動してしまいす。これは最早厄介な病気でした。
「やってくれるか。」と満足そうに頷いた父。
世にも無謀な少年の挑戦はこうして始まりました。
××××
次回、第三話『隣のザクさん(量産型)』
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