人の深淵

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「エリザさん!今お助けします」 戦闘員は拳銃にて鍵を破壊。即座に牢屋内へ駆け込み、エリザを抱き起こす。 「息は……ある!水を飲ませよう」 携帯している水筒で少しずつ水を飲ませる。こくん、こくんと本当に微量ずつ飲み込んでいく音が聞こえる。 「………………ぁ………………ぉ…………」 エリザの口から声が漏れる。吹けば飛ぶような弱弱しい声が。 僅かに開いた瞼から覗く瞳が確かに目の前の戦闘員を映し出した。 「遅くなってしまい申し訳ございません……!アメリカ本部所属、ルーベル=マッカーニです!さあ、帰りましょう!」 鎖を解いて自由の身に。 ……無数の傷や注射針の痕を目の当たりに、どうして今の今まで助けに来れなかったのだと自責の念が沸いてくる。 最早自力で立ち上がる力もない彼女を抱え、帰路に着こうとした、その時。 「構えろ!」 戦闘員の1人が銃を構える。 何者かが薄暗い通路の奥からやって来る。 不気味な足音。 冷たい空気。 全員が、息を飲む。 その姿がアンダーボス、ルジャン=ラクムスだと視認する頃には戦闘員が1名、銃撃に倒れていた。 眉間を1発。正確無比な射撃。 「……!」 ボブは思い出す。以前の仮拠点襲撃の際に猛威を振るった、あの化け物の姿を。 7……いや6対1でも駆除できるかどうか。 「散れ!追い込んで殺せ!!」 戦闘員達は前後左右に散開。前の3人は駆け出し、ボブを含む後ろ3人は援護を。 吹き荒れる鉛吹雪。対しルジャンは涼しい顔で3つの弾道を的確に読んで避けていく。 「貴様に葬られた仲間達の無念!!今ここで晴らす!!」 急接近した3人はそれぞれ拳銃を抜きつつ近接戦闘へ。援護射撃が止むと同時に殴り掛かる。 が ルジャンの第一挙動が先んじて繰り出された。 速い。 瞬時に1人の懐に潜り込んで顎を平手打ち。 対応させる暇を与えない。 ナイフを懐から引き抜いたルジャンはすぐさまその喉仏を裂いた。 歴戦の戦闘員と傭兵がすぐそばにいながら、手出しをさせる間もない速度で、鮮やかに。 「きさっ……まァ!」 至近距離にて拳銃を放つ戦闘員と傭兵。しかし即座に低姿勢になっていたルジャンに命中することはない。 そのまま振り返り様にナイフを振るう。
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