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傭兵はその一撃を紙一重で避けると、すぐさま強烈な肘内をルジャンの胸部に叩き込んだ。
ルジャンはそれを手の平で受け止めながら後退して衝撃を軽減させる。
そこへ戦闘員が入れ替わるように前進。ルジャンとの距離を詰めてナイフを突き出した。
大きく上体を反らして避けるルジャン。
その勢いを利用して跳躍し、宙返り。
宙で回転しながらホルスターから拳銃を抜き、戦闘員の心臓と肺へ的確に3発叩き込む。
「ぐは……ッ!」
赤黒い血液を吐き零す戦闘員。着地したルジャンは戦闘員を蹴って通路脇に退けると、一気に傭兵との距離を詰める。
「ウソだろ……!」
即座に跳躍して距離を稼ぐ傭兵。
しかし
ナイフを片手に迫るルジャンの方が
速い。
頸動脈を、食い破る。
「……!」
援護に当たっていたボブらも即座に銃を構え直す。
「無茶苦茶だあんな奴!!」
戦闘員は先んじてマシンガンを構えて発砲。ルジャンに回避を強要させる。
対しルジャンは回避と反撃を同時に遂行した。
銃弾の列の合間を縫うように1発の銃弾が逆行し、戦闘員の頭部を鼻先から撃ち抜いた。
残るは傭兵2名。
「おいおい、本当にモンスターだな!!」
「…………」
エリザの牢屋に身を隠すボブ達。ルジャンが駆けて迫る足音が鼓膜を冷たく震わせる。
充分に接近してきたところで葬るしかない。
身構える2人。
化け物の相手とはとんだ貧乏くじを引いたと思う。
しかし、命に代えてでも葬るだけの覚悟は敗けていない。
何としてでも、一矢報いる。
と
その時。
「ぎゃあッ!!……がッッ!!」
ボブの真後ろで傭兵が突如声を張り上げた。
雄叫びの類ではない。苦しみの声。
同時に青白い発光と放電音。
聞きなれた音色だ。
スタンガン。
それが何故、今ここで、エリザによって、使用されている?
それが何故、味方である筈の傭兵に向けられた?
理解ができない。気絶して倒れ込む味方を前に、ボブの全身から冷や汗が噴出する。
1つ分かるのは……エリザが正気ではないということ。
大きく見開かれた目は充血しており、息も荒い。瞳は焦点を合わせておらず、大きく裂けた口でにんまりと笑っている。
「きゃは……ははひ…………」
ケタケタと肩を揺らして笑うエリザ。
「やった……よ……ほめ……ほめ……て……セフィナおば……さ……」
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