13978人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか……」
「以前にも話した筈だ。沢山の一般人を殺害した経歴のある貴様らを残しておく訳にはいかない」
今でも忘れるはずがない。
ドイツの倉庫街で働く従業員たちを皆殺しにしたのは他でもない。彼らだ。
「抗争のない社会を実現すれば我々も大人しくなる。それでは駄目だろうか?」
「駄目だ。貴様らのボスがこのファミリーに囚われている以上、壊さなければ新たな道を歩めない。ルジャンにでっち上げられた復讐の道から、脱せないままなんだぞ」
「ボスさえ説得し、このファミリーの理念を変えれば表社会に手を出さない運営ができるかもしれない。そのチャンスをもらえないだろうか」
「…………囚われているのは貴様自身もということか」
半ば呆れて溜息を零す明彦。
ファミリーを潰す、という意味をクレイは弁えていない。
床を蹴り、跳躍する明彦。
マシンガンを鈍器として振り上げ、自動販売機を飛び越え、着地と同時にクレイに叩き込む。
「ッ!」
クレイは横に転がってそれを回避。至近距離でアサルトライフルの銃口を向け直す。
と、そこへ明彦が突き出したマシンガンの銃口が正面衝突。結果としてアサルトライフルから放たれた銃弾は明後日の方向へ。
「そのファミリー中毒な考え方が!!」
間髪入れずにクレイの胴体にタックルを叩き込む明彦。
「1番気に入らないと言っているんだッ!!」
クレイの臓器を、押し潰す。
「ご……ッ!」
吹き飛ばされて壁へ背中から衝突するクレイ。
中毒。
その言葉が、彼の心に突き刺さる。
「さあ、講義の始まりだ。お題目は“甘ちゃんの甘ちゃんによる甘ちゃんのためのファミリーがこの星に存在してはいけない理由について”」
握り拳を固く作る明彦。
「感謝して聴講しろ。骨の髄まで叩き込んでやる」
中枢へ繋がる通路にて、とある兄妹が文字通り火花を散らしていた。
華里奈は低姿勢になって澄久の懐に飛び込むと同時、双方の刀を薙ぎ払った。
澄久は危うく足を失うか否かのところで跳躍し、切っ先を華里奈の脳天へ向けて落下。
前方へ転がるように回避する華里奈。澄久の攻撃はポニーテールの先端のみを奪うのみに終わった。
最初のコメントを投稿しよう!