13978人が本棚に入れています
本棚に追加
振り返ると同時、双刃が猛威を振るう。
上から、下から、右から、左から。
圧倒的手数。
「はぁぁァあああああッ!!」
空気が幾重にも裂ける。
華里奈ははっきりと認識している。
自分は……澄久より弱い。
鍛えても鍛えても澄久が上を行く。
今だってそうだ。
僅かにでも気が抜けいていたら、既に3回は死んでいる。
切っ先を壁に擦り付けながら振り抜く華里奈。
が
速い。
斬撃の合間を潜り抜けた澄久は刀を力の限り振り上げ……華里奈の刀を叩き上げた。
両腕を上げることを強要された華里奈。
完全なる無防備。
背筋が凍てつく感覚に見舞われた直後、澄久は続けさまに回し蹴りを脇腹へと叩き込む。
「ッあ!!」
華里奈は肺から空気を絞り出しながら壁へ肩から衝突した。
そこへ澄久の猛攻が迫る。
眉間目掛けて迫る切っ先を寸でのところで避ける。そのまま横薙ぎに振るわれる刃を両手の刀で受け止める。
力と力の押し合い。
ここで気付く。
澄久は片手で刀を握っている。ならばもう片方が黙っている筈がない。
交差した華里奈の刀の間をすり抜け、彼女の胸倉を掴み、肢体を投げ上げた。
仰向けに宙を舞う。
「……っ!」
空中で体を捻り、両手をバネにしながら着地する華里奈。後方へと腕の力のみで跳躍しつつ体勢を整える。
そこへ追い打ちをかけるように斬りかかってきた澄久へ真正面から反撃を仕掛けた。
渾身の力で突きを放つ澄久。
前進しつつ横へ避けた華里奈へ直撃はしなかった。刀は首の横を通過。肩を裂く。微量の血飛沫が宙に放たれる。
それでも華里奈は前に進む。
「ほう」
澄久は笑う。
「お前らしい」、と。
「澄久ァ!!」
踏み込む、華里奈。
双方の刀を薙ぎ払う。
が、澄久が後退するが早かった。刃は虚空を斬る。
「見直したな。今のお前には忌々しい両親が重ならない」
と、澄久。
「……そう見えるか」
「ああ。憑き物を落としたんだな。お前は真の意味で、自分自身の手で刀を振るっている」
「…………」
華里奈には最近になってようやく自覚したことがある。
自分のための、刀の振るい方。
最初のコメントを投稿しよう!