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土方は不機嫌だった。そりゃあもう不機嫌だった。
それは隊士が怯えて廊下ですらすれ違いたくないと半泣きになる程であり、幹部ですら近寄るのを躊躇われるくらいだった。
土方は……寝不足だった。
夜中に目が覚め小夜を襲いかけたあの日から体内時計がおかしなことになっているらしい。
いつも朝一番最後に起きるくらいよく寝るのに、なぜか明け方になると目が覚めるようになってしまったのだ。
必然的に、昼間眠い訳で。彼は常に苛立っている。
不機嫌も何のその、話しかけてくるのは小夜。心配してくれるのが近藤と山南で、相変わらずイタズラを仕掛けてくるのが沖田だ。
寝不足以外にも、不機嫌な理由はあった。
「……土方さん、仮眠をとった方がいいんじゃないですか?」
書類に目を通しながら船を漕いでいた土方にお茶を出しながら小夜が声をかけた。ハッと覚醒した土方は右手で乱暴に目を擦り、より一層眉間に力を込める。
「……んな暇ねぇんだよ」
「でも効率悪いですよ?一回寝ちゃってすっきりしてからの方が」
「うるせぇなッ何も分かんねぇくせに俺に指図すんな!!」
「!」
怒鳴った瞬間、土方は後悔した。目の前の少女の瞳が見開かれる。
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