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草木も寝静まる夜更け。太陽と月の関係という自然の摂理逆らうことなく、新撰組もまた皆が例外なく眠りの国へと身を委ねている。
ごろん、寝返りをうった土方は不意に目が覚めた。珍しい、比較的寝つきが良い(むしろ良すぎる)自分が途中で起きるなんて。
ふと視線を隣にやれば、これまた珍しいことに小夜が健やかな眠りを満喫している。彼女が寝ている姿なんて初めて見た。
取り敢えず時間が気になってのそのそと四つん這いで戸に近寄り開けて空を仰げば、月が大分傾いている。
夜明けが近い。なるほど小夜が寝ている訳だ。
さてどうしようか。無駄に目が冴えてしまって二度寝しようにも眠りの国の往復切符が手に入らない。
無意味だと知りながらまた寝転がって天井を見つめてみる。こんな時に限って鼠の足音すらしない。
ダメだ、暇過ぎる。明日の執務でも少しはやっておけば少しは楽になるのだろうが、そんなことをすれば部屋が散らかって朝起きた小夜に怒られてしまうのは目に見えているし、何よりやる気が出ない。
「……厠にでも行くか」
特に行きたい訳でもないのだが、このまま手持ちぶさたなのも嫌なので土方は重い体を起こした。
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