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土方は腕を擦り僅かな暖を取りつつ立ち上がった。足の裏から廊下の板張りが体温を奪っていく。
寒いと自覚したら不思議と一気に寒くなるもので、彼は足早に来た道を引き返した。幸い部屋はすぐそこだ。
戸に手を掛けて、出た時と同様に細心の注意を払って力を込める。息を潜めて小夜を伺えば、あの時と同じように健やかな寝息を立てている。
良かった、起こさずにすんだようだ。
しかし戻ってきたもののやることは依然ないままで、取り敢えず冷えた体を温めようと布団を被ってみたものの冷えた布団は冷たい。
「……寒ぃ」
眉間に力が入ったまま隣を見やれば、気持ち良さそうに眠る愛しい少女。
「……なんか腹立ってきた」
理不尽だ。
しかし基本自己中な土方はのそのそ小夜の布団に近寄る。
「可愛い顔して寝やがって…」
サラリ、髪に指を通せば絡まることなく流れて落ちる。あんなに起こさないように気を遣っていたのに、そんなことは頭から抜けていた。
彼はひとしきり彼女の頬や頭を撫で回した後、おもむろに布団を捲り上げた。そして小夜が寒さを感じる前に素早く寝転び、同じ布団に入る。
「あったけー…」
小夜の体温で温められた布団が土方を温める。
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