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スルリ、頬にかかる髪を避ければ白くて細い首が露になった。自然な動作で馬乗りになれば、彼女の綺麗な寝顔が良く見える。
胸が、キュッと切なくなった。彼女が……欲しい。
「……小夜…」
吐息混じりに名前を呼ぶ。呼びかけに答えれば、いやその長い睫毛を押し上げるだけでもいい。反応を示したならば。
全力でこの欲望を押し込もう。
この決意は本物だ。
けれど発した声は、彼女が起きるはずがないくらいに小さかった。
案の定小夜は起きなかった。その規則的な寝息がそれを物語る。
「……起きなかったお前が悪い」
時間切れだと言わんばかりに、土方の薄い唇が熱っぽさを孕んで小夜の額に重なった。
月明かりが障子に反射して室内は薄く明るい。その光の加減が土方を煽る。
額の次は目尻の横に口付けて、あの時背中から滑り落ちた細い腕を自らの大きな掌でゆるゆると辿った。
小さな紅葉まで到達すると軽く撫でて、指を絡める。
「ん…」
ようやく違和感を感じたのだろう、身動ぎして夢うつつの状態で抵抗する小夜の頬に唇を落とす。
「今更起きたって遅ぇよ。……もうちょっと寝てろ」
チュッと響く高い音。離した唇をもう一度近づけて頬を舐める。
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