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(俺…何しでかしてんだよォォオオオ!?)
正気に戻った彼は瞬時に飛び退き壁際にビタンッと貼りついて小夜を凝視する。小夜はそんな土方の俊敏な動きにただ呆然としていた。
「あの……大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫なわけあるか!!」
「えぇ!?どこかお加減でも」
「だああああッ寄るなっ来るなっ!!」
「えぇ!?」
事情を知らない小夜はただ怪訝に思うことしかできない。
「よく分からないんですが、取り敢えず手当てしましょう?放っておいて悪くなったらいけませんし」
身を起こす小夜に土方はギョッとする。
「だから来るなってッ!お前が来ると悪化するんだよ!!」
動悸が。彼は主語を省いた。
「何でですか!私が病原なわけないでしょう!?」
「ある意味完璧な病原だッ!」
恋の病の。
むむむっと眉をひそめて唸る小夜は、不意に右手に視線を移す。そしてワキワキと開いたり閉じたりして首を傾げた。
「……何か…妙な感触が残ってる気が…」
指を絡めたからだっ!土方は冷や汗をダラダラ流す。
「き、気のせいだろ…」
「頬っぺたにも違和感が…濡れてる?」
マズイ!!
欲情して未遂とはいえ襲っていたなんて口が裂けても言えない。そんなことをしたなら小夜が意識して離れていくのは目に見えていることだし、彼女経由で確実に近藤に伝わってしまうのだ。
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