神田縁の朝

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「黒矢ー! 朝だよー! へーい! もーにーん! へーい! らいらー!」 「最後の、朝関係あらへんやんけ!」  がばっと。そんな擬音語が聞こえるぐらいの勢いで黒矢は布団から顔を出し叫ぶ。本当に寝起きなのだろうかと思うほどの勢いだ。  そしてまあ相も変わらず黒矢は朝からいつも通り関西弁だった。このちっちゃいほうの弟は生粋の標準語圏で育ちながらも流暢な関西弁を話す。それは昔家族で見に行った某新喜劇が原因、いや理由または発端となる。  当時幼かった黒矢にとって舞台で飛びかう関西弁はカルチャーショックそのものであり、それからというもの、彼は関西弁を日用言語にしようと(なぜだかはわからないけど)今日に至るまでのたゆまぬ努力(とは言っても意識の問題らしい)によって関西弁を操れるようになったのだ!――――なんて、凄い感じを出そうとしたところで全くもって凄くはなく、ただのエセ関西人であり、本人もそこは自覚しているみたい。 「朝だよっ。まったくもって朝だよっ」 「強調せんでいいし、なにより2回言わんでいいわっ! ふぁ……おはよう。絶兄」 やはり寝起きではあるらしく小さく欠伸がもれる。「んーっ」と、伸びをしたあと黒矢はベッドから降りた。 「ん、おはよう。じゃリビングに先に降りてるね」 「おー」と言う声とともに黒矢は制服に着替え始めるところを見て僕はリビングに戻るため部屋をあとにした。
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