神田縁の朝

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 携帯のアラームが鳴る。時刻はいつもと変わらず午前5時。最近お気に入りの洋楽、格好いいギターのリフから始まるロックが僕をまどろみの中から徐々に覚醒させる。 「んー……!」     上体を起こしながら、両手を伸ばす。これをやると不思議なことに声が出るのは僕だけなんだろうか? なんてことを思いつつ、万が一寝坊したときのためのスヌーズ機能を解除した。 ―――現在、僕の家族には両親がいない。もちろん亡くなったわけでも、まして蒸発したわけでもない。今は二人揃って海外に出かけている。この半年はそういった状況なわけで、長男である僕が家事のために早起きしているわけで。  あ、ちなみに海外とおおざっぱな場所指定をした理由は一つ。今どの国のどこにいるかはわからないのだ。  月一度、生存報告ともとれる写真付きのエアメールが届くのだが、先月はアンコールワットをバックにした写真。先々月はロゼッタストーン。『奇跡の3ショット(笑)』と書いたその写真には家族みんなでドン引きだった。  あの両親のフットワークの軽さから、現在の位置を知るのが難しいというわけだ。まぁ、あの両親の適応能力には目を見張るものがあるので、どこの国の誰だろうともすぐに馴染んでしまうから心配はしていない。
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