神田縁の朝

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 そもそもどうしてこんなに長期間家を空けているのか。何故こんな安っぽい恋愛シュミレーションゲームみたいな設定が存在するのか―――まぁただ一つ違うところがあるとしたら僕の朝が可愛い幼なじみの「も~っ! 朝だぞっ」という甘ったるい可愛い声でなく、イギリスのナチュラルに髪が金色なお兄さんの渋い声から始まることぐらいだろう。いや、うん。可愛いらしい妹たち、かっこ双子かっこ閉じる、もいるし、相違点と言えばそこぐらいしかない。  閑話休題。話が明後日なんかじゃなく別の次元に飛んでいってしまってた。何故両親が家を離れているか、だったね。  うちの両親は善人である。何をいきなり、と思うかも知れないけどその一言につきてしまう。現在、マイペアレンツは、日本どころか世界中を巡りながら困っている人たちを助けているらしい。本当に今取って付けた様な理由だが、そうだからこそ、そうだとしか言えない。  置き手紙にもこう書いてあった。『ちょっくら行ってくるわ♪ばいび~(笑)』  今の時分、ばいび~なんて漫画でも出てこない言葉を使う両親のセンスには本当に脱帽だった。しかしまぁ、そういう変なところも人を惹きつける一因なんだろうと、この歳にして思うようになった。  いい意味で『明朗闊達』、悪い意味で『自由奔放』な両親だが、困っている人は見逃せないという信条で今までを生きてきて、そのせいか交遊関係は尋常じゃないほどに広い。友達だけで武道館を埋め尽くせるほどの、国境も人種も越えた友達がいるらしい。  この旅でまた友達が増えるんだろう。うちの両親こそ平和の象徴じゃないのだろうか。ラブ&ピースな両親。そんな父母の仕事を23年一緒にいる僕も知らない。
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