神田縁の朝

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 妹たちの下着について熟考する僕の後ろから、寝起きだとは到底思えないほどはっきりとした発音で声がかけられた。  何も悪いことはしていないはずなのにその声によってか、僕の心拍数は跳ね上がる。いやただ単に跳ね上がるどころか、助走をつけてロイター板で飛び跳ねたね。そんな僕の心臓とともに驚きによって飛び上がりそうになった体を必死の思いで僕は椅子に縛りつける。  声の主はもちろん決まっている。僕の次に起きるのが早く、あの適度に低い通る声。僕は該当する彼の顔を思い浮かべながらゆっくり振り返って、言う。 「お、おはよう銀ちゃん」 ―――神田銀次。僕のおっきい方の弟こと神田家の次男。振り返った彼は、声から感じた印象と変わることなく、到底寝起きとは思えない平常時の顔つきにチャームポイント(と男に使うのは些か抵抗があるけど)の銀ブチのスクエアタイプの眼鏡をかける、身内だからというひいき目じゃなくても端正な顔付き。  先程僕が思い浮かべた顔と唯一違うところは普段はオールバックにまとめられている髪型が無造作になっているところだろうか。その部分がやはり寝起きであることを物語っている。
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