神田縁の朝

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「なな、何を言い出すんだい銀ちゃん!」 「いや、おっきくなったじゃないか。姫のほうが大きいのは少し気になるが」  意外とよく見てるなコイツッ!(『姫』とは僕らのちっちゃいほうの妹であることを補足しよう) 少しばかり動揺がモノローグにまで現れ始める僕は、ここで、あることに気づく。いや――正確には思い出した。神田銀次、彼の最大の特徴であり最大に個性的な一面を。  前述しているとおり、銀ちゃんは普段からオールバックである。そして彼の性格は冷静沈着、思ったことをすぐ口に出さず周りを見れるエアーリーディングの達人。そう……オールバックの時は。  だが、ひとたびそのオールバックが崩れると今までの反動なのか思ったことを口に出し場の雰囲気なんて考えもしない¨空気の破壊者¨(エアーブレイカー)となってしまうのだ! とか昔ながらのヒーロー物のように解説してみたところで、解決はしない。から、僕のやることは一つ。 「あっ! 銀ちゃん、寝癖! やだもーこの子はっ。早く直して来なさい!」  無理矢理洗面所へ連行すること。すると「ん、あぁ」と言って銀ちゃんはすんなりと洗面所へ向かう。  あれの最大にやっかいな部分は本人に自覚がないところだろうなぁ。寝て起きるとつねにあの状態である。普段とテンションも変わらないから身内以外では気付かないだろう。……でも、修学旅行とか大丈夫だったのかな? 高校生のときにはすでにあの髪型だったし。今度それとなく聞いてみようと僕が思うと同時、リビングのドアが開き、ピンク色のパジャマに身を包んだ少女が入って来た。
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