92人が本棚に入れています
本棚に追加
――――――――――――
To:アツシ
――――――――――――
sub:アツシ?
――――――――――――
助けて…
苦しくて死んじゃいそうだよ。
もう何もかも嫌だ。
会社も辞めてココからも消えちゃいたい…
あたし…もう疲れちゃった。
アツシのとこに行きたいよ。
蘭子
――――――――――――
文章を作成し、送信したあとに、あたしは無意識に携帯電話を胸に押しあてていた。
窓の奥に広がるコンビナート、その窓に映る自分は気づかないうちに涙を流している。
それは、本来の自分を隠して、感情を押し殺して、プライド高く完璧に演じてきた「あたし」の化けの皮がはがれた瞬間だった。
ゆりかもめが終点に着き、JR新橋駅に乗換えをしようとしたときだった。
携帯電話がアツシからのメールを知らせる。
――――――――――――
From:アツシ
――――――――――――
sub:どうしたん?
――――――――――――
蘭子、大丈夫か?
何があったんかわからへんけどオレは蘭子の味方やから。なんでも言いや。
自分の中に溜め込むのはアカンで。
ほんまに疲れたら大阪おいで。
――――――――――――
メールを読んだ瞬間、心に、鋭くも気持ちの良い刺激が走った。
そうか。
そうだったんだ。
あたしが欲しかったのは、このメールだったんだ。
なぜ今までわからなかったんだろう。
アツシのところに行けば、あたしが1番欲しかった“絶対の安堵感”が手に入る気がしてならない。
さっきまで土砂降りの雨が降っていたはずのあたしの心は、急に一変し、弾む指先でアツシに返信をした。
最初のコメントを投稿しよう!