【本編】

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大好きな歌手のバラード曲のオルゴールバージョン。 この着信音がアツシからのメールを伝える音色だ。 ―――――――――――― From:アツシ ―――――――――――― sub:今日も残業… ―――――――――――― もう仕事辞めたくなるわ… 辞められへんけどな(笑) こっちは雨やけど東京も雨かな? 蘭子は風邪ひきやすいから気ぃつけてな! ―――――――――――― アツシの柔らかい関西弁があたしの心に火を灯す。 携帯の液晶画面上のやりとりだけが、今のあたしの支えだった。 「メル友」が心の支えなんて馬鹿げてる? それともこのご時世では、あたり前? 別にどんな風に思われても構わない。 今のあたしに「アツシ」は必要不可欠なんだから… アツシとあたしは、いわゆる普通の「メル友」だ。 お互い顔も知らないし、声も知らない。 メールだけの関係だ。 大阪にいるアツシと、東京にいるあたしに「会う」という選択肢はない。 純粋なメールのお友達なのだ。 そんなお友達の関係はすでに5年を超えていた。 もうどうやって「メル友」になったのかさえ覚えていない。 唯一本音を話せる、あたしの大事な大事な相手…
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