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そろそろ、頃合いだろう。
俺は短く息を吸い、
はっきりと言った。
「出てけ」
「…え?」
「飯は食わせたし、もうここに用は無いだろ。さっさと出てけ」
面倒な事になる前に帰ってもらう。
正直、飯を奢った直後ににそうしてもよかったが、
行き倒れの理由くらいは知りたかったので、ここまで延ばした。
「元々関わる理由なんて無いだろ。出てけ。そしてここに戻ってくるなよ」
「ちょ、ちょっと待って!」
自室へ戻ろうとしたら、リリィが俺の服の裾を掴んだ。
…全く、面倒臭い。
「離せ。もう俺とお前が関わる理由は無い。さっきの自己紹介で分かったろ。面倒事は嫌いなんだ」
「…聞きたい事があるの」
そう言うと、リリィは急に真剣な表情になり、言葉を続けた。
「その、このあたりで、悪い事をした人っていないかな?」
「いない」
「…そっか」
がっかりしたような表情をして、俯くリリィ。
「ご飯ありがとう。それじゃ…ね」
そう言うとリリィは玄関のドアを開け、ゆっくりとお辞儀をした後、出ていった。
「…レポートでも書くか」
ただの、ちょっとした不思議体験。
そう思って、俺はいつも通りの日々に戻ろうとした。
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