終わらない悪夢

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高校2年の恭は半年前の夏休みの半ば頃、久々に仕事の休みが取れた両親と出掛けることになった。 泊まりがけで行くのはさすがに無理だったが、せっかくだから海に行こうということになり、日帰りで海に行った。 恭が住んでいた土地は山に囲まれた小さな村で、人口は300人前後。 見渡せば殆ど畑や水田というこの場所から、当然のことながら海が見えるはずもない。 だから、恭はとても楽しみにしていた。 「どのくらいで着くんだよ」 「もう少しよ」 「はは、恭はせっかちだな」 海に向かう途中、車の中で何度も聞いた恭に2人は笑う。 恭は顔を背けて、文句を言った。 「……うるさいな。俺はせっかちなんかじゃない」 「どうだかなあ」 膨れっ面の恭に、父親はクスクスと笑う。 どんなにいじけたフリをしていても、内心は楽しみで仕方がなかった。 ……本当に、楽しみにしていたのに。
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