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目を開けたその先に広がったのは、真っ白な天井。
少し古い木造の家に住んでいたから、そんな天井が自分の家にあるはずがない。
すぐに、ここが自分の家ではないということを恭は理解した。
一体どこなのだろうか。
起き上がってみようとすると体に激痛が走り、それは叶わなかった。
全身が痛み、首を動かすことさえも億劫だ。
これでは、ここがどこなのか、確認することもできない。
「……俺、どうしたんだっけ」
呟いて、恭は記憶をめぐらせる。
確か家族で旅行……そう、海に行った。
それで、楽しんだ後みんなで帰ってきたはずだ。
……違う!
あのとき、帰り道の途中でトラックにぶつかった。
思い出した恭は思わず叫びそうになった。
実際は、怪我のせいか、か細い声しか出なかった。
「母さん、父さん、どこだよ」
そう言った瞬間、ドアの開く音がした。
引き戸のようで、ガチャリという音はしなかった。
「あら、目を覚ましたのね? よかったわ。名前、教えてくれるかしら?」
視界に入ってきたのは、ナース服をきた若い看護婦。
ここが病院だということはわかった。
「……伊波恭」
「井波恭君ね。教えてくれてありがとう。高校生でよかったかしら?」
「うん……」
「そう。わかったわ」
「ねぇ……」
「はい、何?」
「母さんたち、は……?」
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