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「これでよし!」
トランクに服や小物を入れた実和子はそのままトランクを枕代わりにして寝転がった。
「あと五ヶ月で卒業か…」
実和子は高校三年生。まだ九月だが二月に卒業してしまう。
実和子は起き上がってある一通の封筒を引きだしから出した。
『 拝啓 島津実和子様
あなたを大奥の御火の番の女中として採用しました。
仕事に慣れてもらうため、三月の一日から務めていただきます。
将軍家で働く事になった以上、あなたも徳川家の家臣です。
その事を心して仕事に励んで下さい。
瀧島』
実和子は何度も読み返した手紙を見つめた。
大奥で就職する事は実和子の夢だった。
学校の勉強も頑張った。一位や二位ほどではないけど少しでも上位の仲間に入れるよう努力した。
しかし家柄や大卒じゃないせいかお目見え以下の御火の番になってしまった。
それでも夢だった大奥の仕事に就けた実和子は、嬉しくてそんな事どうでもよかった。
ただ夢さえ叶えば…
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