弐 仕組まれた偶然

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自分の心の中でぐるぐると回っている黒い感情が、私を焦らせる。 駄目、焦ったら駄目だ。 今失敗したら、今まで私が募らせてきた全てが無に帰る。 それだけは、阻止しなければ。 ひとつひとつを慎重に積み重ねていく。 失敗だなんて、許されない。私自身が許さない。 「つぐみ、団子持って行ってー」 「はいはい、今行く!」 心の中で小さく溜め息をつきながら。 この店を手伝ってくれてる幼なじみの元へ行った。 そして、美味しそうなお団子の入った皿を受け取る。 「とりあえず、つぐみが下拵(ごしら)えしたのを焼いたから」 「いつもごめんね小太郎、手伝って貰って」 そう、この店は私が両親の死んだ後に形見として受け継いだものだ。 母も、父も死んで。 私に残されたのはこの小さな団子屋と、代々受け継いできた秘伝の味だ。 普段は一人でやっているが、忙しい時は昔からの幼なじみである小太郎に手伝って貰っていた。 「いいってことよ、困った時はお互い様だろ?」 「うん、ありがとう・・・」
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