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そう思うと、今すぐこの胸元に隠してある短刀を抜いて殺してしまいたい。
「・・・っ」
そんな衝動に駆られてしまう、ぐっと我慢して笑顔を作った。
「お礼を言われる程のもんでもねえ」
「それでも、凄く助かったんです。お礼ぐらい言わせて下さい」
照れたように、無愛想な笑みを見せた彼を見ていると、胸の奥底でこみ上げる、殺意。
と同時に不思議な感情。
「団子、一本頼む」
「…はい、少々お待ちください。」
やっぱり、我慢出来ないかもしれない。
私は、ふと懐に隠し持っている短刀の重みを感じた。
――今なら、今なら殺せるかもしれない。
店に入って行く、彼の背中をじっと見た。
私の目はきっと、恐ろしい程の殺意に満ち溢れていたと思う。
だから、気付かないはずがなかった。
「・・・おい、どうした?」
肩を叩かれて、振り向くと小太郎が私を見ていた。
その声で、はっと消えかけていた理性を取り戻す。
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