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「こ、小太郎・・・な、何でもないよ。大丈夫、大丈夫だから・・・」
自分に言い聞かすように、何度も、繰り返す。
それでも気持ちはまだ、何だか奮い立ったままだった。
「・・・そうか?じゃ、そろそろ店も空いてきたし俺、帰るな」
「うん、助かったよ。いつもありがとう」
「おう。また、明日」
小太郎の背中を見送って、私は接客に戻った。
もう、お昼時を過ぎたからか人気のない店の中に客は彼一人。
殺気立った気持ちを、深呼吸で落ち着かせる。
そして、胸の奥で募らせてきた復讐の念をかみ締める。
――焦るな、時期はまだ早い。
「お客様、お団子一つお持ちしました。・・・っあ!!」
「・・・なんだ?」
「いや、何でもないです・・・」
「・・・?お、うまそー、どうもな」
私はどうやら重大な失敗を犯してしまったらしい。
彼の所に、団子を持って行く。その時に、それに気付いた。
――だ、団子に毒を忍ばせればよかった!
頭を抱えて、叫びたくなる気持ちを必死で我慢しながら、笑顔を作った。
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