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つぐみの店から出た沖田。
昨日の浪士討伐から一夜。
ここ最近浪士の動きがさかんだ。
土方からの任により、前々から怪しいと思っていた事件に関わっている店を隅々から洗っていた。
今の、団子屋は、恐らく白だろう。
只の、町娘の営む小さな店に過ぎないだろう。
それにしても、いつ行ってもあそこの団子は美味しい。
あの娘とあの場所で真正面に話したのは初めてだが。
「あ、沖田さーん!今お忙しいっすか?」
この声は、と思い振り替えればやはりそこには奴が居た。
新選組の八番隊を受け持つ隊長でもある、藤堂平助である。
「あぁ、忙しいな。お前と話している暇もねえ」
「つれないっすね、一緒に茶屋でもどうです?大野屋さんとか・・・」
「・・・昼間から出会い茶屋なんて行くか、馬鹿野郎」
素っ気ない返事にでもあれこれ付けて、屁理屈つけてくる奴だ。
そして非常に―――色好み。
「今、団子を食ったばっかだ」
「団子・・・あ!あそこのつぐみちゃんのとこっすか!?」
「・・・つぐみ?」
知らない名前が出てきたと思い首を傾げれば、藤堂はにやりと笑った。
「可愛いでしょ、つぐみちゃん」
そんな藤堂に思わず顔がひきつった。
あぁ、間違えた、こいつただの色好みじゃない。とんでもない女好きだった。
「あぁ、そうだな」
「いやいや、この辺りで一番ですよ!島原の女にも負けないぐらいっすね」
「そうかあ?」
あまり、顔の印象はなかったが、ただ俺に対する殺気が尋常じゃなかった。
まぁ、所詮ただの小娘。
放って置いても恐らく何の害もないはずだ。
それより、心配なのは―――
「・・・お前、喰うなよ?」
「何言ってんですか!俺は沖田さんの女に手を出すほど節操なしじゃありませんって」
「いや、俺の女じゃねーよ!大体お前ここらの町娘みんな手中に収めてるらしいじゃねえか」
嫌味に言ってやれば、藤堂は実に素晴らしい笑顔を作って笑う。
「沖田さん、大丈夫です、つぐみちゃんは未だですから」
「だからそう言う問題じゃねえよ!」
何を言っても果てしなく無駄な気がしてきた。
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