弐 仕組まれた偶然

2/10

19人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
「つぐみちゃん、お団子二本お願い」 「こっちにみたらし一本頂戴~」 華やかしい、昼の京の街。 その中の一軒の小さな甘味屋は、お昼時の今、慌ただしく賑わっている。 「はーい、ただいまお持ちしますね」 あちらこちらから聞こえる、注文の声に少し忙しいもののにこりと笑って答えてみせた。 昨日の夜、あの事件のせいで帰りが遅くなった為。 たまにふと眠気が襲ってくるけど。 昨日の夜は久しぶりに、良い収穫があったから、それも気にならない。 昨日は特別、山菜採りに出掛けた訳ではなかった。 しかし、夜に偶然出会ったあの男。 いや、私が出会うのを待ち望んでいた男、沖田総司。 「・・・」 今までに彼の巡察中等に遠目でしか、見れなかった。 あんなに接触できたのは初めて。 だけど昨日はちゃんと面構えも覚えたし、相手も私のことを知ってしまった。 これで、ようやく準備が整ってきたんだ。 そう思うと自然と、頬が緩む。 ――もうすぐ、私が長年待ち望んだ時がくる。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加