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赤い血、夜の闇、月の光。何が起こったのか、一体そこにあるものは何なのか。
わからない。わからないが、目の前に立つ者から感じる恐怖が考えることを止めさせる。
「息子か」
低い男性の声が部屋に響いた。それと同時に足音が、男が近付いてきた。手にあるのは、月明かりを反射し禍々しく輝く蒼い三日月状の剣。
死ぬ。その単語が頭を支配する。生きた心地などしない。後退りしようにも、背中には壁。逃げ場などない。いや、例え後ろが廊下で逃げれたとしても、逃げ切ることは不可能だろう。
男が近付いてくる。そのたびに、その姿が露になっていく。人とは違う若干蒼白い肌、鋭く伸びた爪、尖った耳、そして、自分を見詰める金色の瞳。
コツリ。と、床を叩いていた音が止まる。気付くと、目の前に男が立っていた。その腕が振り上げられる。
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