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剣を振り上げた状態で止まった男に目をやる。確かに、竜人の特徴を全て持っている。
そして、父が高い階級の者であったのも確かだ。魔法を使う者と剣などの体術を使うものにわかれるこの世界ではそれぞれにいくつかの階級が存在している。魔法の場合魔法使い、魔術師。剣の場合剣士、剣術師。そして、その上に魔人、魔王と続く。父はその魔人という階級に属していた。
「正直この惨状は戦争である限りしょうがないこと。例え納得出来なくてもね。でも、あなたは別なの」
ウンディーネが部屋の中を泳がせていた視線を自分へと向けた。
「今はわからなくても、いつか、近い未来わかる日が来るわ。今は目の前のピンチを乗り切りましょう」
「乗り切る……」
無理だと思った。父が強いのは知っているし、自分じゃとても歯が立たない。その父が――。
「無理だ。勝てるわけない。父さんでも勝てなかったのに!」
「そうね、あなたの父親は勝てなかった。でも立派よ。自分が全ての注意を引き付け、あそこの三人に危害が加わらないように戦っていたわ。そのせいで……。でも、彼が注意を引き付けたことで、三人はまだ息がある、生きているわ」
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