第九章:姉川の戦塵

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「同盟での時の約定について教えたよな?」 「はい、確か…、朝倉を攻める際には一言、浅井に言うようにというものでしたが…。…っ!まさか、大殿がそれを破ると!?いや、しかし、仮に破られても今の織田と浅井の力関係を見れば、我等に力を貸すのは明らかでは…。」 松鷹は一氏の言葉に納得したかのように頷いた。しかし、松鷹には別の根拠があった。 「一氏の言うことは至極当然、反論の余地はあまりないな。しかし、そこで出てくるのが、公方様(足利義昭の現在の通称)だよ。」 「公方様、ですか…?」 「そう、覚えているか?昨年、大殿が公方様に出した定めを。」 「『殿中御定』の9ヶ条ですね。公方様に必要以上の権限を持たせないためのものでしたよね。」 「あぁ、一昨年の終わりの頃から大殿と公方様の関係は悪くなり始めていたが、昨年の『殿中御定』でいよいよ関係は悪化したと考えるべきだろう。…今の公方様にとって大殿は目の上のたんこぶ、排したい気持ちで一杯だろう。」
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