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まあ、と。答えてから彼女は一つ置いて、続きを言う。
「アリスの質問の意味はわかるよ。それは私が言葉を積むよりも、実際見た方がいいと思うからね。百聞は一見にしかず、そろそろ……おっと、」
チェシャが高みから遠くを見遣る。何だろうかとその視線の方を見ると、しばらくしてがさがさと草を分ける音が耳に届いた。そして。
「ぅや?」
兎耳が姿を表した。
「…………」
男の子ような格好をしているが、女の子だろう。短い白の髪に、男物のような白いスーツ。日常じゃなかなか目にしない片眼鏡。……それに白い兎耳。
先に猫耳を眼にしていたから比較的大人しく受け入れられたが、やっぱり、変だろう。
「ああ、遅かったね。シロ」
わたしより早く、チェシャが上方から声を投げてくる。それを見上げて、少女は……シロ、は声を張り上げる。
「チェシャ、残念ながら僕は一分一秒たりとも遅れていないよ。キミが早すぎるんだ」
その声は少しハスキーだが、やはり女の子のものだった。
「まあ、そうだろうね」
それに溢すようにチェシャは応え、そしてわたしを向いた。細められた眼がわたしを見据える。
「あとはシロについていくといいよ。アリス。さっきの質問の答えが待ってるから」
言われ、わたしはシロと呼ばれる白兎を見た。
シロは人懐っこく笑って、わたしに手を伸ばす。
「行こうか、アリス」
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