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ユウノが渡してくれたバスタオルで体を拭いて、むちゃくちゃの部屋の中から着れる服を適当に見つけて着替えた。
「やっぱ…お前何着ても似合うな。」
自分の座るスペースを確保して、クッションの上に座っているユウノがそう言った。
似合うもなにも、ただの黒いロンTに灰色のスウェットだ。
「お前だってスタイルイイじゃん。」
「マジ?」
「センスは兎も角。」
「あっは!知ってる!」
何が面白いのか、ユウノはげらげらと笑い出した。子供の様なその笑顔に、思わず俺も頬が緩む。
それからドサリとベッドに座って、ふう、とため息をついた。
ユウノは、何も聞かなかった。
何があったとか、何故学校に来ないとか…。聞かれても、俺は素直に答えなかっただろうと思う。もしかしたらユウノもそれを分かっていたから、何も聞かなかったのかも知れない。
敵わない。
何をするにしても、全て見透かされていそうだ。
実際、そんな事はないのだけれど、って、どちらかと言えば彼はKYな発言の多いやつなんだけど(本人は無自覚)、たまに、極たまに、ドキリと勘の良いことを言うから怖い。
そんなお前に、
そんなお前だからこそ、
俺は惹かれているんだろうな。
悲しいくらい、強く惹かれてしまった。
もう、戻れないかも。
どうして俺は男なのだろう?
女であったなら、
何も問題なんて無かったのに。
…あぁ、それでも、
それでも俺は、
お前に出逢えた事に後悔はしていないさ。
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