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静かに、目が覚めたのは、夜中だった。
深夜1時を過ぎた頃。
ドキン、ドキンと、心臓がまだ激しく動いている。やたらと音が大きい。
顔が、濡れていたから、やはり泣いたらしい。
大きく数度、深呼吸をして気分を落ち着かせる。
大丈夫、大丈夫、夢だ。
そう、必死に自分に言い聞かせた後に、俺は体を起こして、部屋を見渡した。
当たり前だけど、ユウノはそこに居なかった。
それから、つ、と窓に目をやる。
外へと繋がる、俺の部屋の唯一の窓は、しっかり閉まっていた。
それを見てホッとした。
改めてぐるりと暗闇の中で部屋を見渡してみれば、何か、雰囲気違うと感じた。
違和感を覚えながらベットから降りて、パチリと灯りを付けてみれば、すぐに分かった。
ゴミが、減ってる。
ユウノだろう。
あのお節介。
割れていた皿やグラスも、散らばっていた雑誌やペンも、あるものは捨てられて、あるものは所定の位置に戻されていた。
部屋が片付いていると、なるほどスッキリした気分になる。
大分と落ち着いた気持ちで、ふと、目を落とすと、テーブルの上に雑に千切ったルーズリーフを見つけた。メモだ。
『寝てるみたいだから、帰るな。風邪ひくなよ?それから、禁酒、禁煙。約束な?また明後日くらいに寄るよ。』
力強い、右上がりのクセ字。
ああ、ユウノだ。
変わってない。
そう、実感した途端に、ボロボロと涙が零れた。
俺は、最低だ。
何を考えていたんだろう?
あんな、夢。
夢の中とはいえ、ユウノを穢した。
そんな事、望んでない。
望んでいないつもりだった。
しかし、所詮、人間と言うものは、楽な方へと流れる生き物らしい。
ならば、アレはやはり、俺の願望の具現なのかもしれない。
くしゃりと、彼からの置き手紙を握りしめると、ぱたた…と大粒の涙が机に落ちた。
俺は、なんて汚い人間なんだろう。
もう、嫌だ。
もう、駄目だ。
ユウノの事を、本気で好きだから、
もう、
顔を見たくない。
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