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「なんかさー、」
「うん?」
「俺さぁ、」
「うん。」
「嬉しいよ、今。」
「…何で?」
「えぇ?だってさ、ヒロが俺を頼ってくるなんて、今まで無かったからさぁ、なんか、嬉しい。」
にこにこしながら、ユウノがコンビニの袋をガサガサと漁り、栄養ドリンクやらおにぎりやらパンやらを机に並べる。
「そうだっけ?」
「そうだよ。」
俺はベッドに横になりながら適当な相槌をうつ。
「高校ん時とかさー、独り暮らしなワケだし、風邪の時くらいパシッてくれたっていいのに、全く何も言わないんだもん。お前。」
「あんまり覚えてないや。」
「心配して行ったら行ったでさ、移ったら困るから帰れ、だもんな。」
「お前に悪いと思ったんだよ。」
「に、してもちょっとくらい家に入れてくれたっていいじゃん。」
「一番しんどい時に来る、お前が悪い。」
「だってなぁ!お前、あん時電話にも出ないし、メールの返事もしなかったじゃないか!」
「寝てた。」
「しかも3日だ!3日間も音信不通だった!」
「…そうだったかな?」
「そうだよ!マジに心配したなぁ、あの時は、いや、あの時も。」
「うん、いや、まぁ、ゴメン。」
「調子悪いなら調子悪いって言えよな。…どうする?お粥とかあるけど?」
「あ、じゃ、それで。」
「了解。」
にっこりと、ユウノは笑うと、キッチンの方へ消えていった。
その、広い背中を、俺は目に焼き付けるように見ていた。
高校の時より、筋肉が付いた。
昔はどちらかと言えばひょろりとした印象だったけども、今はかなりがっちりとした体つきだ。
大人の男、って感じ。
色気は、ミキの方が上かな?
「うわっつ!あっつ!やっべ!あっつ!」
「ユウノ?」
「ゴメ…ヒロ…なんか、ご飯がマグマみたいになってる。」
「は?」
時間、ミスりやがったな。
重たい体を起こして台所に行けば、なにやらレンジの中でぐらぐらと煮えたぎっているお粥と、困った顔のユウノが居た。
なんつーか…世話の焼けるやつ。
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