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熱々のお粥を何とか取り出して、冷めるまで待ってから食べた。
その間にユウノと話をして時間を潰す。
学校の話、ミキとジュンとの話、それから、ユウノの彼女の話。
全部を話してくれたから、全部を聞いた。漏らす事なく、ちゃんと聞いた。にこにこと、笑顔で話すユウノから目を逸らすことなく、聞いた。
幸せそうで、なにより。
それから他愛もない話と、何てことないテレビ番組を見てケラケラ笑って、あっと言う間に俺たちは夜を迎えた。
「じゃ、帰るわ!俺。」
「うん。」
「ヒロ、ちゃんと寝て、体調戻せよ!」
「うん。」
じゃーなー!と陽気に手を振って、ユウノはご機嫌に帰っていった。
それを俺は姿が見えなくなるまで見送った。
見えなくなってからも、少しだけそこに居た。
ふう、と溜息をついた後、ゆっくりとドアを閉めた。
しん、と、静まった部屋で、さっきまでの余韻に少しだけ浸る。
目を瞑れば、アイツの笑顔が浮かんだ。
これで大丈夫。
これだけで大丈夫。
さて、
出て行こう。
俺は準備していた古臭いボストンバックを持った。
必要な物は、金と、少しの食料と、水。
携帯は解約する。
もう必要ない。
そのほかの物も、全て置いていく。
ただ最後に、どうしても会いたかった。
もう、これで満足だ。
出て行こう。
ユウノの人生に、
俺は必要ではないのだ。
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