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自然と、目が覚めた。
朝の5時。
肌寒いのは、中途半端に布団がはだけていたからだろう。
身震いがした。
むくりと体を起こせば、すぅ、と体温が下がっていく感覚。頭がくらっと傾く。
あ、駄目だ。貧血。
血が足りない。
俺は再び、くたりとベッドに寝込んだ。
こういう時は、無理をしないに限る。
窓の外はまだ暗い。
けれども真夜中のような静けさはなく、街が目覚める準備をしているようだ。空気が動いている気がする。
そんな気配を感じながら、俺は白い天井を見ていた。
こう、部屋から出なくなって何日が経つだろう?
今日は、まだ、体の調子は良いような気がする。
それは、逃げてきたはずなのに、やはりどこかで期待していた自分がいる証拠かもしれない。
ユウノ。
今日、来るんだろう?
俺のもとに。
じわりと、涙が滲む。
早く会いたい。
でも、来ないで欲しい。
お前の顔が見たい。
でも、会いたくない。
お前が好きだ。
でも、憎い。
「…マックス。」
自分でも、か細い声だと思った。恐らく、誰かが隣に居ても聞こえないような声だろう。蚊の鳴くような、息だけの声。
それでも、
「ここに居ます。」
それでも彼は反応した。
相変わらずの冷たい手を、俺の頬に添える。
「鍵は?」
「持っているでしょう?」
…あぁ、そうか。
そうだったな。
右手を広げてみれば、鍵があった。
ずっと持っていたのだ。
俺は。
気分の優れない筈の体を起こし、俺は開かなかったあの引き出しに手を掛けた。
「嗚呼…僕を選んでくれるんですね?」
今までで一番、弾んだ声でマックスが言う。
「…嬉しいです。」
俺の背後から長い腕が回ってきて、腰に巻きついた。
軽く、手首を左に捻れば、カチリと、思っていた以上に軽い音が鳴る。
それは、開いた。
―それは、駄目だ!―
戻れなくなる。
―約束したじゃないか!―
それでもいいのなら、
―駄目だ!―
「さぁ、手を伸ばして、」
―ヒロ!―
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