愛しきモノ

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生きることの意味を聞かれればその答えを知っている人が何人いるのかと応えたくなる。 正しい道も間違った道も、生きる上で必要なものなら失っていい未来はないのだろう。 けれど『生きる』ことそのものが意味のないものだとしたらどうやって意義を見つけ出していけばいいのか。 宗教や昔の偉人は揃って神様から頂いた命だとか、母なる大地から頂いた恩恵だとか、そんなことを言っていたが、もし彼らが科学の進んだこの世界でそれを説くとしたら一体なんと言うのだろう。 失った代償とこれから受ける恩恵を天秤にかけてみたい、と琴音は思う。 受けた恩恵とその無意味さを天秤にかけてみたい、と亮は思う。 優しさが全て心に染みるとは限らないし、傷がすべて苦悩になるとは限らない。 生きていく上で必要なものは喜びと悲しみ、嬉しさと苦痛。 暖かい体温にくるまれる瞬間だけが満たされるなどくだらないと思う2人はもしかしたら似ているのかもしれなかった。 .
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