STAGE 5 世界が広いと思う時

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ブゥーっとお茶を吹き出すバラドがいる。 『おいミシェル、冗談だろ? 神咲ってブラディアの中でも最強に位置するよな? それを侠介が倒しちまったってか!?』 『えぇそうらしいわ。 橘はまだ第二解放した侠介はブラディアが支配しているって気付いていないみたいだけど…… それより、バラド。床、ちゃんと拭いてね。』 研究施設の医務室。 ベットに横たわる神咲は完全に麻酔で寝ているが、侠介はベットの上であぐらをかきながら目をつぶっていた。 『記憶がない……』 侠介は神咲の巨大な獣(ブラディア)によって押さえ込まれた所まで覚えている。 それ以降の記憶が無く、気が付けばボロボロの自分と地面に倒れている神咲の姿が目に入った。 そして神咲の一言。 『侠介さんに負けたみたいです』 侠介は混乱し、頭を掻きむしる。 『あぁー訳わかんねぇ!! 全然っ記憶がねぇ!!』 そこに橘が入って来た。 『具合はどうですか? って神咲さんはグッスリですね。 侠介さんは何やら頭の上にモヤモヤが見えますけど』 今、侠介の頭の上にモヤが見える。 『なぁ、さっきの録画してんだろ? 少し見せてくれないか?』 急に橘は真顔になり、 『別に構わないけど、何で録画してると?』 『来た時から思ってたんだけど…アンタ「そうゆうタイプ」だろ?』 『……って、どうゆうタイプ?』 橘は侠介を連れ自室へと向かう。 橘は研究者と言えど女性。 だが自室はとても女性らしくなく、とても汚い。 何かのデータや研究本、フロッピーや今では珍しいビデオテープが散乱している。 『そこら辺に座って下さい。 大丈夫、虫なんて出ませんよ』 『…聞いてないのに答えるって事は出るな……』 憂鬱になりながら侠介が座るとスクリーンが目の前に現れ、神咲との戦いが流れはじめた。 『早送りできる?』 侠介の声に合わせ早送りする橘。 『ストップ!!』 スクリーンに映し出された場面は丁度、記憶が無くなる手前の状況。 『(ここからだ……一体何が起こるんだ?)』 瞬きすらせずに食い入るように見る侠介を見つめる橘。 『(一体、このシーンに何があるのかしら……)』 そこから最後まで見た侠介は黙ったまま動かなかった。 『(あれ…俺だよな? 羽生えてるし、あれがミシェルの言っていた俺の第二解放。 あんな状態だったのか。 しかも俺の意識じゃなくブラディア自身が俺の体を動かしている)』 『大丈夫ですか侠介さん』 橘の声に我を取り戻す侠介。 『少し横になってます……』 侠介は橘の自室を後にした。
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