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歩く侠介に付いて行きながら、その背中をジッと見詰める神咲。
『……メチャクチャ視線を感じるんだけど、何?』
侠介は歩きながら神咲に言う。
『いや……侠介さんって人気高いんだなぁって思って』
『……何の事?』
一緒に来た特A隊の隊員と合流し特殊車両に乗ろうとした時、入口に橘が来た。
『何、まだ何かあんの?』
『いえ、見送りですよ。
本当は引き止めたいですけど』
橘はグルグル眼鏡を上下に動かしながら言う。
『俺は引き止められたくないね』
車が走り出す中、侠介は窓から手を出し手を振った。
帰る途中、神咲が呟くように話す。
『橘さんが言っていた事、私は興味があるんです』
『ブラディアの話しか?』
『はい。まだ聞いてませんでしたよね?』
『何を?』
『私のブラディア、侠介さんには何に見えました?』
神咲の質問に首を傾げる侠介は笑いながら答えた。
『何に見えたかって、「馬鹿デカイ獣」にしか見えなかったぞ。それがどうしたんだ?』
『実は侠介さんが見たソレは私のブラディア自体ではないんです。
私のブラディアの能力は、「対峙する相手に合わせ最も強い存在を具現化させる力」』
『悪ィ、神咲。解りやすく言ってくれるか?』
『「相手の力に合わせ」て形が変わるって事です。
相手が弱いモノであればそれに応じた形になり、
相手が強いモノであれば、その強さ自体を具現化させた形になる。
つまり侠介さんが見た「巨大な獣」は言わば侠介さん自身の力。
私の中のブラディアが本能的にって言うんでしょうか、侠介さんの内にある大きな力に反応して、その形になったんだと思います』
侠介は、あの巨大な獣が神咲のブラディアだと思っていた。
だが違っていた。
神咲の言ったそれをもっと簡単に言えば、あの時の巨大な獣は
「侠介自身の力の化身」
だと言っている。
『……侠介さん、貴方の力は!! って、寝てるし!!』
神咲が自分のブラディアの話しをしていた途中で寝ていた。
『神咲ちゃん、寝かせといてあげな。
侠介はいつも「外に出たら」寝ないんだよ。
いつジュバロが襲って来るか分からないからって。
でも寝ちまうって事はそれだけ疲れたんだろうな』
神咲は備え付けてある薄い毛布をそっとかける。
『…そんな可愛い寝顔したら私、ますます……』
頬を赤らめる神咲。
『お~い神咲ちゃ~ん。俺の話し聞いてる~?』
運転する隊員の声が虚しく響く。
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