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『二人には、ここで戦ってもらいたいんだけど問題があったわね』
橘は「しまった」と頭を抱えた。
『何だよ問題って』
『問題以前の問題よ。
バラドさんのブラディアは拡散型で、しかも攻撃要素が一つも無い!!
ムンクの様な顔で叫ぶ橘。
口から、白文字の「キャー」という吹出しが見える。
『橘、馬鹿にすんなよ。俺だって一端のブラディア所有者なんだ。』
とバラドは橘に言うが、橘はまだムンクのままだ
『聞けよ!! 人の話しをよ!! ったく何なんだアイツは』
『なぁバラド』
いつになく真剣な顔付きの侠介に、バラドも真剣な顔付きになる。
『どうした?』
『知ってると思うけど、俺が第二解放したらブラディア自身が表に出るだろ?
そしたら俺は制御出来ねぇから……』
『心配すんなって。
そん時はボッコボコにぶん殴ってでも終わらせてやる』
と、橘を見る。
『いつまで、あぁしてんだ? アイツ』
橘のムンクの叫びは、しばらく続いた。
『えぇ~では始めますよ』
急に真面目になった橘に言われ、向かい合う侠介とバラド。
そして互いに能力を解放する。
『思えば、侠介が隊に入ってからこうしてやり合うのは初めてか』
『そうだな。しかも、互いに手の内を知ってるってなるとやりずらくて仕方ない』
その会話直後、バラドの両腕が光りだし霧のような物が辺りを包み見えなくなる。
『橘さん!! これでは……』
『気にしなくていいわ。録画は続けなさい。
(バラドの能力は拡散型。
霧状に拡散した物質が相手の体内に入り込み、各身体機能を著しく低下させる。
かえって、侠介は自分の身体能力を著しく上昇させる強化型の能力。
言うなれば「相対する者同士」。
さて、侠介はどうするのかしらね……)』
周りに拡散していくバラドの霧は、段々濃くなっていく。
侠介は跳ぶように後方へ下がり左腕で鼻と口を抑える。
『(って鼻と口を抑えただけじゃ防げないんだよなコレ。
と言って大量に吸い込めば俺でも3分も保たない…)』
辺りを包む霧の中から声が聞こえてくる。
『どうした侠介!! 引き下がったままじゃ、俺には勝てないぞぉ!!』
侠介からは霧が濃すぎて霧の中は見えないが、バラドは周りがハッキリと見えている。
『橘、聞こえてるんだろ? 良く聞いとけ。
さっき俺のブラディアは「拡散型で攻撃要素が無い」って言ったよな?
だったらその目を見開いて見とけ。
拡散型は散布するだけが能力じゃねぇんだよ』
すると霧が吹き飛ぶように左右に別れバラドの周りに集まりだした。
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