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バラドの周りに集まりだした霧(ブラディア)は、両腕に纏わり付き「白銀の篭手」の様に見える。
更に体、両足と各パーツごとに霧は纏わり付いていく。
『おいおい、マジかよ…』
その姿を見た侠介の顔から笑顔は消える。
『この姿を「表に出す」のは初めてだ。
あっ言っておくけどな、これは第二解放じゃあないぞ。
「応用」ってやつだ』
今のバラドの姿は17・18世紀頃の西洋の騎士そのもの。
唯一、素肌が確認できるのは口元のみ。
白銀の霧の鎧に見を包んだバラドは……強そうだ!!
強化ガラス越しにそれを見ている研究員も口が開いている。
『あの~橘研究部長……あんな拡散型、見た事ないですよ』
『凄ぇ~ぞありゃ!! ねっ橘部長!!…って、橘部長?』
いつもなら真っ先に興奮しているハズの橘はグルグル眼鏡越しでも真顔なのが分かる。
『(あの姿……拡散型なのに関わらず、強化型の能力と似た能力になってる。
確かあの隊員の本名は……まさかね。)』
そんな中、バラドの放った霧は白銀のフルメイルのみならず、白銀のランスをも形成し始めていた。
『バラド!! 何でそんな物騒なモノ、今まで隠してた!!』
『別に隠してた訳じゃねぇよ。必要無かっただけだ。
さて始めるぞぉ~』
バラドは軽いノリで言い放ち、構える。
『ったく、そんな格好でやるんなら手ェ抜けねぇじゃねぇかよ!!』
先に侠介が走り、右腕を後ろに引きながら拳に力を入れる。
『俺から行くぜ!!』
侠介は高く飛び上がり、バラドの霧の鎧に向け右腕を振り下ろす。
『…!? 何だこの感触!! 気持ち悪っ!!』
「鎧は鎧でも所詮は霧」という認識でしかなかった。
だが今の感触は霧(気体)ではなく、ゼリーの固まりを殴ったような感触だった。
侠介は腕を抜き取り、蹴りを当てるが同じ。
たまらずバク転しながら後ろへ後退する。
『何だアレ? 打撃が全く効きやしねぇ』
その一部始終を見ている研究員は食い入るように見ている。勿論、橘も。
橘は何かを考えているような姿勢で微動だにしない。
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