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セシルは部屋に閉じ籠っていた
その顔に以前のような凛とした表情は無く、何かを思い詰めているようだった
(今日も見てしまうのだろうか………)
「セシル!」
聞き慣れたの声がセシルの耳に入る
「ローザ…」
セシルの最愛の人、バロン国王妃にして有能な白魔道士、ローザの姿がそこにあった
「………また、あの夢を見たの?」
「…ああ。」
―――セシルは数日前、ある悪夢にうなされた
気付くと自分が暗闇の中に立っている
そして目の前に
暗黒騎士だった頃の自分がいる
『何故恐れる?』
――!?
『世界を救う為に恐れを捨てた君が、何故また僕を恐れながら戦う?』
――僕は…恐れながら戦ってなど……
『いや…恐れている。僕を……そして君に宿る月の民の力………』
――!!
『兄、ゴルベーザはわずかだか心に憎悪が潜んでいたため、ゼムスに操られた。…君にもわずかに在るはずだ。』
――たとえ在ったとしても僕は………!
『その憎悪も暗黒も……
受け入れてしまえ…
楽になる。』
《やめろぉ――――!!!》
―――そこで目が覚める
それからというもの、こんな夢を何日も見続けているのだ
気が滅入るのも頷ける
「…きっと疲れてるのよ。たまには休養をとるといいわ。」
「ありがとう…」
―――疲れのせいなどではない
ローザもセシルも分かっていた
セシルは本当に恐れを抱いてしまったのだ
(セシル…どうか気付いて………貴方は恐れる必要など無いことを………)
夜―――
セシルはバルコニーに立ち、月夜を眺めていた
「情けないよね…」
そっと呟いた
(カインが聞いたら何て言うだろう…)
カイン――
セシルの親友であり、ライバルでもある竜騎士
今はミシディアにある試練の山で技を磨いている
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