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我が家の朝はいたって普通だ。
目覚ましが百個一斉になる訳でも無く、フライパンとお玉という調理器具を叩き鳴らし、家内を歩き回る母親もいない。
ただ静かに起床時間を告げる目覚ましが、いたって普通に鳴るだけだ。
俺、四神和也は今日もいたって普通に起床したってわけ。
「んーっ」
俺はベッドの上で上半身を起こし、両手を上げ、軽く伸びをした。
時刻は六時丁度。
いつも通りだ。
「さて……と」
寝間着のままで部屋を出る。
廊下に出ると、我が家が「普通」では無い事に思い知らされる。
高価そうな絨毯が敷き詰められた長い廊下に、それに合わせて立ち並ぶ部屋の数々の扉。
ここはいわゆる一つの世間一般でいう、お屋敷という建造物ですね、はい。
近所のおばさんが羨ましがっているのを知っている。
「私もお屋敷に住んでみたいわぁ。和くん今度泊まらせてぇ」
無駄に横に広く、質量が常人の二倍ありそうな身をくねらせ、鼻につく香水の匂いを撒き散らしながら、まとわりつかれた事があったからだ。
ぜってー嫌だ!
あんなのと暮らすくらいなら、今のまま一人の方が良い。
そう、ここには俺一人。
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