序章

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 無駄に長い廊下を抜け、キッチンへと向かう。  両親は車の事故で帰らぬ人達となった。  俺が当時13才で、今18才だから……5年前か。  この屋敷は両親が亡くなる前に立てられた。 「家族が増えるからな!家はでかくないと!」  と、豪快に笑う親父を覚えている。  金……良くあったな。  確か、親父の仕事はどこぞの製薬会社の研究員だった筈だ。  ……まぁ、いいさ。  屋敷は現にここにあるし、ローンなんてものもない。  両親が死んだ日、保険屋と弁護士だかが来て、何か色んな事をしていった。  何でも、高額な保険に加入してただの、親父が勤めてた会社が親父の功績を偲んで助成するだだの……。  要するに面倒な事は、彼等が全て片付けていった。  両親共に、天涯孤独だった為、親族はいない。  何かと気にかけてくれる人はいたが、当時の俺は家から離れたくなくて、この家に残る事を決めた。  弁護士がハウスキーパーを頼んでくれ、高校入学まで世話になった。  気の良いおばさんで、彼女に一人暮らしのノウハウを学んだ。  元気にやっているだろうか?  俺は、彼女直伝の目玉焼きを作り、一人で朝食にした。
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