序章

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 パンを口に頬張りながら、テレビの電源を入れる。  毎朝見慣れたニュースの、女性キャスターが映し出される。  別に世界情勢だの、株価だの、事件だのをチェックする為に毎朝見ている訳では無い。  単に「音」が欲しいだけ。  正直、俺一人にこの屋敷は広すぎる。  両親を亡くしたばかりの頃の俺には余りにも寂しすぎた。  何でも良いから「音」や「声」が欲しかった。  それで、自然とテレビを毎朝つける様になっただけの話だ。 「……ケ…カル社が、……を開発。と同時に……」  ん?  今、なんか聞いた事がある会社名が。  牛乳をコップへと注ぐのを中断し、テレビを見る。 「次のニュースです」  おい……。  肩透かしを食らった。  やるな!ニュースのお姉さん! 「ピピッ、ピピッ」  足元を、丸い円盤型の掃除ロボが通過していく。  屋敷内のセキュリティも兼ねてる優秀なヤツだ。  難点は……パッと見、太古から生き続け、黒光りしてるヤツラにソックリなんだよな。  まぁ俺の色の選択ミスなんだけど。  あとは床しか掃除出来ないって事くらいか。  ……次の日曜にでも棚掃除しよう。
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