プロローグ 桜の季節

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プロローグ 桜の季節

一年中付けられた風鈴。 それは、僕の季節感が薄れている何よりの証拠。 チリンチリン プァーン 彼女もついに発病してしまった。 考えることのいっさいをやめてしまう、新しい流行病。 現代人にとってある意味とても都合のいい病気。 「じゃあ俺、行ってくるから。 今日こそは仕事見つけないとな」 チリン……。 彼女は反応を示さない。 僕はカチュ―シャで髪を止め、表へ出た。 その流行病が流行りだしたのは1年前。 原因も治療法もわからないまま。 僕は自転車に跨がると、線路沿いを走った。 そして1ヶ月前。 彼女はリモコンで動く人形のようになってしまった。
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