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「――――で、俺
死んじゃったのかぁ。
ははは。子供かばって死ぬなんて、ベタだね、俺。
ガラじゃないことしちゃったよ」
「兄ちゃん、カン違いしてねぇ?
あんた、あの時なんもしてねぇぜ?」
「え?」
「あんたは呆然と突っ立ったまま。
急ハンドルを切ったトラックは運悪くあんたに命中。
ぺっちゃんこ。
結果的にガキは助かったけどよ。
むしろダッシュで逃げてったけどな。
ぎゃは」
「ふうん……別に……いいけど」
死神たちに憑かれ、事故死。
享年26歳。
僕は死神達と空高く飛んだ。
「ま、死ぬ時なんて人間あっけないもんよ?
案外きっかけなんて、そこら中に転がってるのにな…
死はニュースの中の出来事だと思ってるようだが、
事故とか災害とかテロとか。
あんたも知ってるだろ?
新しい病気が世界に蔓延しつつあることを。
危機感が足りねぇ。
誰ひとり自分がいずれ世界から消えるなんて考えていないのよ」
白い建物が見える。
煙突から黒い煙があがっている。
喪服に身を包んだ人達。
「残ったヤツらはヤツらで、いなくなって初めてそいつの存在に気付くんだ」
その中に彼女の姿を見つけた。
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