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エピソード②坂の多い街
あたしが住んでいる街は坂の多い街だ。
その日の朝、通学路の途中、車に轢かれ破裂した猫の死体が転がっていた。
そしてその横には烏の格好をした死神がいて、
「おい、おまえ」
唐突にあたしに語りはじめたのだった。
「世界は今 暴力と欲望で溢れかえっている。
なんてくだらない世の中だ。
そして なんて愚かなのかね、人間てのは。
いずれはこの猫のように朽ち果ててしまうというのに」
わたしはその生意気な烏を捕まえようと、両手をそぉっと出した。
「なぜ人間はそんなに必死に生きようとするのか!?」
スカッ
キキキキィ
バササッ
「そしておまえも!!」
急ブレーキをかけて停まったトラックの前で、黒い烏の羽が落ちてきた。
「コラ ガキッ!!危ねぇだろ!!」
ふと目の前を見ると、コンクリートを突き破って無理矢理にタンポポが咲いていた。
「……おい?」
なぜかあたしはその季節はずれのタンポポに見入ってしまった。
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